Vimテクニックバイブルを買って斜め読みました。Amazonで予約していたのですが、店頭で先行販売していたのでついそちらにも手を出してしまい、自宅とオフィスに1冊ずつという状態です。Vimの本ということでどうしても身内目線になってしまい公正な書評になるかは怪しいのですが、できる限り配慮してみましょう。
本書は一言で言えばTips本です。ある条件の限定されたシチュエーションの下でうまく機能するTipsをひたすらかき集めています。ひたすらというのはやや語弊があり、おおよそ章毎のテーマに基づいて順を追って集めているというほうが正しいでしょう。その意味で本書はTips本として一定以上の水準を満たしています。しかし私はTips本が根本的に嫌いです。Tips本は読み手が条件にハマれば役に立ちますが、そうでなければケツを拭く紙にもなりゃしません。逆に言えばちょっと立ち読みで目次と真剣に睨めっこすれば、自分がその条件にハマるかどうかは容易に判断がつく類の本です。お金を払うかどうかはそうして決めるのが良いでしょう。
と、ココまでが他人目線での極めてドライな評価です。以下、個人の感傷を多分に含んだウェットな評価をしてみましょう。
まず本書の面白い点は初心者への配慮を一切省略した点でしょう。「まずモード解説から」というVim/vi本の常識を覆しています。「とにかく最新のVimの使われ方を広範に紹介したい」という本書のスタンスからすれば当然ですが、斬新です。一方で熟練者にも発見があるという触れ込みもありますが、これはそのとおりだと感じました。Vimがこれほど広範に利用可能だということは、その高機能ぶりに比べてあまり知られていません。しかし私は残念ながらコレに含まれません。
含まれないとは言ったものの実は本書、私だけに(たぶん著者の一人であるmattnさんにも)許された、特別な読み方があるのです。Vimの発展の歴史を長く見てきた(時に関わってきた)身としては、家族のアルバムを見ているかのように思い出に耽る、そんな読み方ができるのです。紹介されるスクリプトひとつひとつ、スクリプトが使っているVimの機能のひとつひとつに、それが開発されるに至る経緯、過程のエピソード(主にバグ)、完成をみたときの感動、そういう思い出があります。もちろん直接関わったのは一部なわけですが、まぁこれだけ長くみていると愛着するなというほうが無理があるわけで。
某グルメリポーター的に言うならば「思い出の宝石箱やぁ」とも言うべき本書を、世に送り出してくれた著者陣には感謝することしきりです。
以上、やはり偏った評になってしまいました。いや評とすら言えないかもw